秋のこころ旅シリーズ 久井の岩海(三原市)


この頃は「えらい降り続きますどすなぁ」という
舞妓さんも二度聞きする挨拶が定着しつつある
元似非京都人が働く自転車屋ですおばんどす(今昼過ぎ)。

秋雨は毎年のことなので特別驚きもしませんが
これだけ週間天気予報に傘マークが並ぶのは珍しいような気も致します。
これを冬と夏の間の通過儀礼と考えると
秋雨はつまり梅雨の兄弟みたいなもの、と言えるのでしょうか。

そう考えると、この長雨も仕方なしという気がしてきますね。
この寛大な気持ちも下着の着替えストックが枯渇するまでですけど。

さて、今回も前回に続きサイクリングレポートです。
と言うより、走ったのは前回の翌日ですので
更新が遅すぎる感もあるのですが
なにぶん雨続きでしたので…いや、店に屋根はありますけど…。

今回も、NHKの「にっぽん縦断 こころ旅」に即した内容です。
実際、前回の”瀑雪の滝”の翌日に火野正平さんもいらっしゃった
“久井の岩海”が今回の目的地です。

読み方は「くいのがんかい」ですが
Google日本語入力には「悔いの眼科医」と変換されましたので
今ちょっと使いみちを考えているところです。
「あ、今患者さんに渡した目薬、中身はお酢じゃった!」とか?

コースはこちら。
御調(みつぎ)までは前回と同じルートです。

尾道からは、瀑雪の滝よりも近い所にあるのですが
なにぶん山の中でございますので、獲得標高は前回よりも上
という難コースです。(往復獲得標高1100m)

そんなコースと知ってか知らずか
この日は、秋の味覚に反応したのか
いつもは動かざること山の如しのハイグーシャが動きました。

山さんの自転車は特に軽いギアへ交換しておりますが
クロモリロードで、しかも滅多に自転車に乗らないのに
よくこんな道を走る切れるのぉ、とは
連れてきておいてなんですが毎回思います。

この地面に無数に落ちているのは
秋の味覚の代表である栗、の住居です。

これでパンクした、という人は今まで1人しか知りませんが
パンクだけではなくスリップもしやすいですので
その他の秋の刺客、落ち葉やドングリと共に注意が必要です。

あと妖怪栗拾いババにも。

そしてポケットを栗でパンパンにしたババの前に現れるダム。

昨今、夢と書いて「ドリーム」と読ませる人名が珍しくない
のかどうかは知りませんが、と言うかこのドリームちゃんは
男なのか女なのかが気になりますが、そんなご時世にあっても
栗を「マロン」と読ませる感覚はちょっと理解し難いものがあります。
こんな山の中にフランス語、ですから。

それ以前は野間川ダム、さらにその前は久井ダムだったそうですが
その旧称になんの問題があろうか、と昭和生まれは憤るのであります。

脱線ついでに申し訳ございませんが
栗は英語だと”chestnut(チェスナット)”なんだそうです。
“chest(チェスト;胸)”+”nut(ナット:木の実)”が語源でしょうか。
確かに大胸筋っぽいですね、栗って。

この日も、路上には沢山のカマキリが佇んでおりましたので
右へ左へかわしながら走っておりましたが
このイチャイチャカップルは避けんでよかろうか、と一瞬考えました。

しかし聞いた話だと、カマキリのオスは
交尾中にメスに食べられてしまうとのことですので
ここは同性として助けたほうが良かったのでしょうか。

その、種の保存だけを目的として
用が済めばこれからエネルギーが必要となる母親の食料となる
というオスの究極に合理的な生き様は、自然界では理に適っているとはいえ
人間のオスからするとなんともやるせない気持ちになりました。

ウチはまだマロンで満足してくれる間は生き延びられそうです。

そんな自然の厳しさに思いを巡らせながら走っておりますと
ようやく久井の集落に到着致しました。

久井の中心街は、目的地である岩海よりも先にあるのですが
岩だけを見てUターンすると、栗拾いババが妖怪イガグリ投げに進化しそうでしたので
ここでランチタイムを取ることと相成りました。

ここも火野さんの行程を辿り、同じ食事処へ。

山の中で海の幸を頂きましたが美味しかったです。

ここからは、目的地まで6kmもないぐらいでしたが
その前に、先程から気になっております、町で一際目立つ神社にちょっと寄り道。

久井稲生神社(くいいなりじんじゃ)と言うそうですが
境内から谷あいの集落が一望出来る、個人的に最高のロケーションです。

他には島根の津和野(つわの)も
規模は異なりますが似たような雰囲気で、やっぱり好きな町の一つです。

手水の説明図もなんか独特です。

ところで”稲荷”ではなく”稲生”と書くのは
この地方独特のものなのでしょうか?

さて、寄り道も終わりましたので
いよいよ目的地へダラダラと上っていき…あ、デカイ木。

この”吉田のギンモクセイ”は日本一大きいものらしく
この時は既に花の盛りを過ぎておりましたが
9月中旬には凄まじい芳香を撒き散らしているのではないかと思います。

しかしこの坂を古希前の火野さんは上られたのですね。
ひょっとしたら番組では押していたかも知れませんが。

そうしてようやく到着の久井の岩海、というか樹海?

文字通り「岩の海」なのですが
辺り一面、というよりも細長く岩が露出した感じです。

同じくNHKの”ブラタモリ”の影響で
以前に比べ地質への興味が高まっているのですが
こういう不思議な光景を目の当たりにすると
さらにその成り立ちが気になってまいります。

解説板を読んでブラタモリ風に解釈すると
もろい花崗岩の表面に”節理”という筋が入って割れて小さくなっていき
砂程度まで小さくなった地表のそれが、水で洗い流されて
地下にあった角が取れた岩々が露出した、ということみたいです。

これが初期の節理で

その節から更に侵食が進み、いずれは真っ二つに。

そしてその角が風化や水の流れで丸まり
今のような形になったということらしいです。

それはどれぐらいの期間でそうなるのかは分かりませんが
人間の一生程度では殆ど変化が起こらなさそうですので
なんともスケールの大きな自然のショーであることか、と
感嘆しつつ振り向くとまた栗拾いババが仕事に精を出しておりました。

そんな、短いながらも色々凝縮したサイクリングでございました。
特に秋にお勧めしたいコースですので、栗は既に妖怪に拾いつくされておりますが
景色と味覚と知的探究心を楽しみたい方は、秋晴れの日に是非お出かけください。

 

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